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執筆者の写真宇佐見 義尚

マイナビ農業より転載🖊 子ども農園の原点、はじめの一歩

マイナビ農業より転載させて戴きました🖊 公開日:2019年04月14日



地元農家の協力で食材自給 寄付だけに頼らない子ども食堂へ

【農業と子ども食堂#1】


子どもたちの居場所として注目が集まり、その数も徐々に増えている「子ども食堂」。提供する食材をどうやって確保するかが、課題のひとつともなっています。子ども食堂を農業という側面から見つめる、全3回の連載企画。1本目となる今回は、群馬県安中(あんなか)市の3つの子ども食堂によって開設された共同農園で、食材を自給する取り組みについて紹介します。


目次

  • 共同農園を作ったきっかけは子ども食堂の「自立」を目指したこと

  • ハクサイやブロッコリー作りから農園が本格的にスタート

  • 継続していける子ども食堂を目指して……


共同農園を作ったきっかけは子ども食堂の「自立」を目指したこと


「安中子ども食堂共同農園」は子ども食堂で使う食材の自給自足を目指して、地元農家の力を借りて開設された農園です。自分たちで農園を作る子ども食堂は全国的にも珍しく、先駆的な取り組みとして注目されています。


共同農園を開設したのは「ジジババ子ども食堂」、「子どもワクワク食堂」、「子ども食堂和が家あんなか」の3団体。いずれも群馬県安中市で子どもの居場所づくりを推進しています。


農園を発案したのは、3団体のうちの1つ「ジジババ子ども食堂」の運営者である宇佐見義尚(うさみ・よしなお)さん。2017年9月から子ども食堂を運営する中で、野菜を寄付してもらう機会が増えたことにより、自分たちでも野菜を作ることで、身をもって野菜づくりの大変さを感じることができ、また寄付に対してもより一層ありがたみを感じるようになれるのではないかと思うようになったそうです。


また、寄付だけに頼る食材調達では、足りないものを店舗で買わなければならなかったり、ほしい食材が得られにくかったりという課題もありました。「子どもたちにさまざまな種類の安全な野菜を食べてもらいたい。そして子ども食堂が自立して、自分たちで必要な食材を確保する必要性を実感し、農園を作ろうという話になった」と宇佐見さんは話します。

地元農家から借りた約10アールの土地を草刈りする様子


農業経験がなかったため、食材を寄付してくれていた農家に相談したところ、近隣の農家5~6人が集まる会合を紹介され、農園づくりへの協力を求めることに。遊休農地を貸してくれる人、野菜の栽培方法を教えてくれる人などの賛同がすぐに得られて、翌日には農地を見学に行きました。日当たりがよくて肥沃(ひよく)な土地を借りることができて、草刈りや土おこし、土づくりも農家の助けを得て行い、宇佐見さんたちの野菜づくりがスタートしました。


草刈りと土おこし、土づくりが終わった農園の様子




ハクサイやブロッコリー作りから農園が本格的にスタート


台風の雨風にも耐えて成長したハクサイ


昨年(2018年)9月、最初に植えたのはハクサイ100苗とブロッコリー200株、そして玉ねぎ2000株。宇佐見さんは、苗の調達や有機肥料の施肥など、農家の力を借りながら初めての野菜づくりを進めていったそうです。同年12月にはハクサイが旬を迎え、子ども食堂での提供も始まりました。


収穫したハクサイが使われた「ジジババ子ども食堂」のメニュー


さらに今年2月にはブロッコリーが実りを迎え、前橋市の子ども食堂にも無償で提供しました。宇佐見さんは、「ブロッコリーに青虫がたくさんついてしまったときは、子ども食堂に通う子どもたちの協力を得て、手作業で駆除しました。自信をもって提供できる無農薬のブロッコリーです」とうれしそうに語ります。さらに、子どもたちにはこうした作業を通して野菜を育てることの大変さと、同時に農家さんたちへの感謝の気持ちを持ってもらいたいと話していました。


大きく育ったブロッコリーは子ども食堂だけでは使い切れず、1株100円で販売することに。SNSや口コミで宣伝したところ、収穫日に畑に買いに来てくれる人や、和食料理店の人が購入して、約100株が完売したそうです。その売り上げ金は農園の運営費にあてるということで、その実績は継続できる共同農園のあり方を体現しはじめたと言えるかもしれません。



ブロッコリーについた青虫を、割りばしでつまんで除く様子





継続していける子ども食堂を目指して……



「ジジババ子ども食堂」


共同農園を開設した「ジジババ子ども食堂」、「子どもワクワク食堂」、「子ども食堂和が家あんなか」の3団体は、今年2月に「安中市子ども食堂連絡協議会」を発足させ、さらに連携をとっていく方針を示しました。宇佐見さんたちが目指しているのは、子ども食堂を中心として、農業などを巻き込みながら行う社会づくり。子ども食堂同士が農園の運営以外でもしっかりと連携することで、食材の無駄を防ぎ、困ったときに助け合うことができると期待しています。



「子どもワクワク食堂」


活動し始めた当初は子ども食堂のビラを配ることさえままならないような状態でしたが、地域や教育現場での理解が深まったことによって、来年度の安中市の一般会計当初予算案で「子ども食堂支援事業」として7万円が盛り込まれるまでになりました。さらに、3月にはJA碓氷安中(うすいあんなか)の青壮年部からも包括的支援の申し出があり、堆肥や余剰野菜の無償提供、さらには子どもたちの農業体験をともに進めていくことが決まったそうです。


「子ども食堂和が家あんなか」での食事風景


ただし、今後の大きな課題は、農園の運営費の確保。地元の企業に協力をあおぐなどして、行政に頼らず継続していくための資金を調達していきたいと考えています。そのためにも、農園ではイタリア野菜や京野菜など各地の珍しい特産野菜を栽培して、子どもたちが好奇心を持って見に来られるような先進的な教育の場にもしていきたいと宇佐見さんは考えています。


農園に定植したハクサイの苗


宇佐見さんは今後の展望について、「子ども食堂は貧しい子どもたちだけの居場所ではなく、社会の中でみんなの居場所ともなり得るもの。子ども食堂の数を増やすことも一つの目標ではありますが、何よりも子ども食堂自体を継続することこそが私たちの責任だと思っています」と話していました


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